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Youtubeでは、本の内容を要約するチャンネルが人気です。時間がなかなかとれない人や、どの本を読むべきかの参考に視聴する人も多いからだと思います。
親鸞会が1万年堂出版から発刊した、歎異抄をひらくと歎異抄ってなんだろうの要約が、本要約チャンネル(現在チャンネル登録者数116万人)で取り上げられていました。
視聴してみましたが、さすが人気チャンネルだけあって非常にうまく要約されています。これを見れば、「歎異抄をひらく」も「歎異抄ってなんだろう」も読まなくてもいいのではないかと思ったくらいです。
以下動画より抜粋。引用部分のリンクから該当箇所にジャンプできます。
【ベストセラー】「『歎異抄をひらく』と『歎異抄ってなんだろう』」を世界一わかりやすく要約してみた【本要約】 - YouTube2限まとめ
ポイント1
すべての人は「治らない難病」と「治る難病」にかかっている。
「治らない難病」は108の煩悩のことであり、特に恐ろしい「欲」「怒り」「愚痴」を「三毒の煩悩」という。
ポイント2
すべての人間は、「欲」「怒り」「愚痴」の心によって、苦しみ悩んでいるが、『歎異抄』には、これらの煩悩は、死ぬまで減りもしなければ、無くなりもしないと説かれている。
ポイント3
「治らない難病」の煩悩は苦しみの「枝葉」
「治る難病」は「根本」である。
『歎異抄』には、苦しみの根本である「治る難病」を完治することで、無上の幸せになれると説かれている。
【ベストセラー】「『歎異抄をひらく』と『歎異抄ってなんだろう』」を世界一わかりやすく要約してみた【本要約】 - YouTube3限まとめ
ポイント1
『歎異抄』には「死後が暗い心の病」がすべての人の苦しみの根本であり、死ぬまで治らない煩悩とは違い、生きている間に完治することが出来るものだと説かれている。
ポイント2
死は、万人に共通する100%確実な未来であるにもかかわらず、その確実な未来がハッキリしない「死後が暗い心の病」をかかえているので、現在の私たちも心から人生を楽しむことができない。
ポイント3
「死後が暗い心の病」が完治することで、生きている今から「人間に生まれてきてよかった」という幸せになることができる。『歎異抄』には「死後が暗い心の病」が完治した幸せな世界が、明らかにされている。
このまとめの内容については、著者がコメントをしているので間違いないと思います。
この記事を読まれている現役会員の方は、「歎異抄をひらく」と「歎異抄ってなんだろう」は読まれていると思います。元会員の方の中では、両方とも読んでいないという人もおられると思います。私は両方読んでいますが、本当に上記のまとめの内容以上のことはないと言ってもいいです。その意味で、著者も太鼓判を押すくらいよくできたまとめだと思います。
まとめ動画は、約30分ですが、歎異抄とはなにかに10分、煩悩の話が10分、「死後くらい心によって私は苦しんでいる」の話が10分という構成です。
上記2冊は大体そういう構成で書かれているといっても過言ではありません。また、親鸞会の話自体も大体どの演題の話でもそのような構成ではないかと思います。
しかし、これが本当に「歎異抄の内容」なのでしょうか?
歎異抄は何が書かれた本なのか?
浄土真宗聖典註釈版では、歎異抄の説明として以下のように書かれいます。(抜粋)
親鸞聖人の在世の頃より、人々の間に、真実の信心と異なる誤った考えが生じていた。本書は、聖人から直接教えをうけた著者が、聖人がお亡くなりになった後、これらの誤った考えが生じたことを悲歎し、同じ念仏の道を歩む人の不審を除くために著したものである。この書に述べられているのは、異端を弾劾するといった冷やかな批判ではなく、真実の信心を見失っていく人々への深い悲しみである。それは、著者自身によって付せられた「歎異抄」という題号からも明らかである。(歎異抄 - WikiArc・浄土真宗聖典註釈版P829)
「真実信心と異なった考えが生じていた」ことを嘆き、「同じ念仏の道を歩む人の不審を除くために著したもの」が歎異抄です。
ですから、信心と念仏についての関係が中心となっている本です。
有名な第2条では
親鸞におきては、ただ念仏して弥陀にたすけられまゐらすべしと、よきひと(法然)の仰せをかぶりて信ずるほかに別の子細なきなり。
念仏は、まことに浄土に生るるたねにてやはんべらん、また地獄におつべき業にてやはんべるらん。総じてもつて存知せざるなり。(歎異抄 - WikiArc・浄土真宗聖典 (註釈版) 第ニ版P832)
とあります。
また、第9条では
念仏申し候へども、踊躍歓喜のこころおろそかに候ふこと、またいそぎ浄土へまゐりたきこころの候はぬは、いかにと候ふべきことにて候ふやらんと、申しいれて候ひしかば、親鸞もこの不審ありつるに、唯円房おなじこころにてありけり。(歎異抄 - WikiArc・浄土真宗聖典註釈版P836)
とあります。
このように、「念仏」と「信心」が大きなテーマである「歎異抄」であるにも関わらず、すくなくとも「念仏」については殆ど触れていないのが「歎異抄をひらく」「歎異抄ってなんだろう」です。これでは、いくら書籍にしたとしても、少なくとも「歎異抄の解説書」ではありません。そのことがよくわかる要約動画だったと思います。
新しい広告?
「歎異抄をひらく」「歎異抄ってなんだろう」は新聞広告によく出てきます。しかし、新聞広告も長年掲載していると「新聞を見て本を買う人」はやがてあらかた購入する時期がきます。少なくとも「歎異抄をひらく」に関してはそうなっているのだと思います。最近の新聞広告では「歎異抄ってなんだろう」が全面に出ている形になっています。
そこで、今回の「本要約チャンネル」に関しては、1万年堂出版の新しい形の広告ではないかと思いました。
理由としては、要約の最後の部分にあります。
【ベストセラー】「『歎異抄をひらく』と『歎異抄ってなんだろう』」を世界一わかりやすく要約してみた【本要約】 - YouTube
上記画像の部分。
本の要約であるにも関わらず、なぜか「アニメ映画・歎異抄をひらく」と「マンガ歎異抄をひらく | 「歎異抄をひらく」映画製作委員会 (脚本)和田清人 (漫画)太田寿 (解説)伊藤健太郎 | 仏教 | 1万年堂出版」を「親鸞思想の入門コンテンツとして非常におすすめの作品となっております」と勧めています。
そもそも、最近出た「歎異抄ってなんだろう」だけでなく、2008年に出版された「歎異抄をひらく」を同時に要約することも不自然ですし、その上「アニメ映画」や「漫画版」の「歎異抄をひらく」を勧めるているのも違和感があります。また、動画公開当日に著者がコメントを入れているのはこのチャンネルでは少なくともほとんど見ないものです。