親鸞会を脱会した人(したい人)へ

宗教法人浄土真宗親鸞会を脱会した人(したい人)の為に、親鸞会とその教義の問題について書いたブログです。

[書評]「歎異抄ってなんだろう」高森顕徹(監修) 高森光晴・大見滋紀(著)(1万年堂出版)・令和版「歎異抄」を作ろうとする親鸞会

1万年堂出版より、12月1日に新刊「歎異抄ってなんだろう」高森顕徹(監修) 高森光晴・大見滋紀(著)が出ました。

私は11月上旬にアマゾンで予約をしていたのですが、発売日になっても発送予定日がどんどん遅くなり、12月27日到着予定となりました。そこで近所の書店を探すと入荷していたので購入できました。 ネット書店では現在でも入手するにはしばらく時間がかかります。 以下感想を書きます。


この本はタイトルにも書きましたが、令和版「歎異抄」を作ろうと企画された本です。


表紙を見ると、歎異抄の解説書のように思いますが、中身を見るとそうではありません。実際に歎異抄を解説した部分は、全7章中最後の1章で第一条の冒頭だけが解説されています。それ以外はいわゆる「仏願の生起本末」について書かれています。

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歎異抄ってなんだろう」P190-P191

内容そのものについては、ほとんどが以前に出た「なぜ生きる」と重複しています。または、親鸞会で活動したことのある人であれば高森会長から聞いたことがある話ばかりです。


全体の構成は歎異抄と同じ

ほぼ全部にわたって書いてある事は、高森会長が今まで法話で話をしてきた内容です。そのことを意識して書いたような本になっています。そしてあとがきにはこのように書いてあります。

先生から教えていただいた私たちが、その一端なりと歎異抄の入門書で著せないかと、ご無理を承知でお願いし、監修していただいたのです。
同じようなことを重ねてあり、しつこく思われたでしょうが、入門書に徹する事を旨として、平易に鋭意努めた結果であると、ご容赦いただきたいと思います。(P219)

ここで言われている先生と言うのは高森顕徹会長のことです。
高森会長から長年話を聞いていた著者が、私は高森先生からこのように聞きましたと言うことを、高森会長自身が監修する事で内容にお墨付きを与えた形になっています。
ですから、この本に書かれている事は高森会長が話をしてきたことをそのまま収録したものと言う形になっています。

まつたく自見の覚語をもつて他力の宗旨を乱ることなかれ。よつて故親鸞聖人の御物語の趣、耳の底に留むるところいささかこれをしるす。ひとへに同心行者の不審を散ぜんがためなりと(歎異抄 序)

歎異抄は、作者が親鸞聖人から直接お聞きしたことを書き残すことで、当時の念仏者たちの不審を晴らそうとした書物です。


この「歎異抄ってなんだろう」も、書いた意図はほぼ同じです。高森会長がいなくなった後、親鸞会内部での見解が分裂していくことを予想して、統一見解としての「先生はこうおっしゃった」と言うことを書き残そうとしたものです。


しかし、高森会長が教えてきた事は、すでに著作がいくつもあるではないかと言う人もあるかもしれません。ところが以前に出した「なぜ生きる」「なぜ生きる2」については色々と問題がありネット上でも様々な指摘がなされています。
そこで、仕切り直しとして(なかったことにして)今回書かれたのがこの「歎異抄ってなんだろう」です。今後は、「歎異抄をひらく」とこれが親鸞会内部での「お聖教」となることと思います。

親鸞会」も「親鸞会色」も出さない内容

細かい内容については、今回は言及しませんが、一読した感想は「とにかく批判をされないように書いた」というものです。「親鸞会独自色」を極力薄くして、「こう書けば文句はでないだろう」というゾーンを中心に書いています。


しかも、監修、著者も含めて、「宗教法人浄土真宗親鸞会」の言葉はどこにも出てきません。

著者情報(「BOOK」データベースより)
高森顕徹(タカモリケンテツ)
昭和4年、富山県生まれ。龍谷大学卒業。日本各地や海外で講演、執筆など

高森光晴(タカモリミツハル)
昭和28年、富山県生まれ。浄土真宗学院学長。国内、海外で、講演多数

大見滋紀(オオミシゲキ)
昭和49年、東京都生まれ。浄土真宗学院上席講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
楽天ブックスの商品紹介より引用)

この「浄土真宗学院」は、浄土真宗親鸞会が運営するネット上の学校です。

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浄土真宗学院HP

浄土真宗学院

しかし、よくよく見ないと、親鸞会に気がつきにくい表示になっています。
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この本を出す事で、親鸞会を世に広めようという意図はあまり感じません。

むしろ、今いる会員が今後高森会長がいなくなったあと、いかに分裂していくことを防ぐのかという意図で書かれています。
かつては「真宗の危機は人類の危機だ」「真宗改革我らの手で」と スローガンを掲げて外に打って出た親鸞会ですが、高森会長も高齢となり今や完全に内向きとなっています。ネット書店でこの本が入手しにくくなっているのも、あまり外部にこの本を売る気持ちがないからではないかと思います。


かつての親鸞会と、今の親鸞会を比べてみて「どうしてこんなことになってしまったのだろう」と「かつて思い描いた正しい親鸞会」と今後の展開が異なる事を歎いて書いた本がこの「歎異抄ってなんだろう」です。

参照

目次

目次
序章 世界を魅了する名著
時を超え届けられた、謎に満ちた美文
知識ゼロから理解するには


第1章 難病人
治らない難病────欲、怒り、愚痴
金や地位や家族が有っても苦しみは消えない
「怒りの心」は、欲を邪魔され現れる
他人の不幸をひそかに喜ぶ「愚痴の心」
仏の眼は心の奥底まで見通している
治る難病────死後が暗い心の病
死は、土足のまま座敷に乗り込んでくる
未来が暗いまま、現在を明るくはできない
死におびえたトルストイ
「ごまかしは問題の解決にはならないのだ」
この事実に驚かれた親鸞聖人も、ただちに出家した


第2章 名医の案内者
生老病死」を超える道を求めた釈迦
「さとり」には52の位がある
2600年前の大宇宙観


第3章 名医
名医とは弥陀のこと
釈迦が生涯かけて説いた「弥陀の誓願」とは
死んだらどうなるかハッキリさせる
抱きしめられて、絶対に捨てられない幸せ
やがて死ぬのに、なぜ生きる? 答えを示す歎異抄


第4章 特効薬
南無阿弥陀仏」はたったの六字だが、その効能は限りない
死ねば極楽へ往くことが、今ハッキリする
極楽浄土はどんな世界か
「猫の参るお浄土は、宮殿楼閣みなカツオ」


第5章 全快
親鸞聖人の教え=平生業成
親鸞聖人は29歳の時、「救われた」
全快した世界「無碍の一道」とは
苦しみが喜びに転じ変わる常識破りの幸せ


第6章 お礼
感謝の言葉は「南無阿弥陀仏
猛火の中、護られた教行信証


第7章 『歎異抄』冒頭の言葉
この一文が分かれば『歎異抄』が分かる
700年前の唯円から、私たちに託された「手紙」

歎異抄ってなんだろう | 高森顕徹(監修) 高森光晴・大見滋紀(著) | 仏教 | 1万年堂出版